名古屋地方裁判所 昭和43年(わ)2247号 判決 1969年10月27日
本籍
愛知県碧海郡知立字本町七番八番合併地
住居
本籍に同じ
会社社長
深谷市郎
明治三七年六月一〇日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官中村三次出席のうえ審理をして、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月および罰金三〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五、〇〇〇円
を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
ただし、この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執
行を猶予する。
理由
(罪となる事実)
被告人は、愛知県碧海郡知立町大字知立字本町七番・八番合併地において、精肉の販売などを業としていたものであるが、事業所得の一部を秘匿して、所得税を免れようと企て、
第一、昭和四〇年分の実際の総所得金額は、すくなくとも二、〇八四万八、九五二円であり、これに対する所得税額は、九八五万三、二〇〇円であるのに、架空仕入を計上し、売上の一部を除外して架空名義の預金を設定するなどの不正な方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四一年三月一五日、所轄碧南税務署において、同署長に対し、その総所得金額は、三四二万五六円、これに対する所得税額は、八一万三、四四〇円である旨の過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の方法により正規所得税額との差額九〇三万九、七〇〇円を逋脱し、
第二、昭和四一年分の実際の総所得金額は、すくなくとも一、九六三万四、二八一円であり、これに対する所得税額は、九〇九万二、〇〇〇円であるのに、前記同様の不正な方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四二年三月一五日、所轄碧南税務署において、同署長に対し、その総所得金額は、二三八万四、〇一四円、これに対する所得税額は、五七万六、九五〇円である旨の過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の方法により正規所得税額と申告所得税額との差額八五一万五、〇〇〇円をほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一、被告人の当公判延における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書二通
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(昭和四三年七月三一日付、同年六月四日付)
一、森さちよの検察官に対する供述調書三通
一、深谷一巳、深谷征子の検察官に対する各供述調書
一、加藤よし子、高橋十四三、富山峰雄、鬼頭多い、中村唯子、加藤金次、岡田勝、高木正二、加藤せき、村瀬清、加藤武文、竹内助三、平松三夫、小嶋朝善、深谷一巳(二通)山崎敦夫、宮崎二三枝、水野伸一、原田君江、前川勲、友竹保、安藤繁、安藤治男、安藤富貴子、吉川寿久、湧川朝寛の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、森川さちよの大蔵事務官に対する質問てん末書二通(昭和四三年四月二四日付、同年七月二日付)
一、向山一行、安島清親、前田秀男、清水寿子、三森一正、三浦欣哉、佐藤勝衛、新宮弘平各作成の各上申書
一、白谷憲男、加藤春雄、保田金太郎、江阪節雄、水野隆、寺井明子各作成の各回答書
一、勝田鍋二作成の証明書二通
一、中村孝一作成の印鑑現在確認書
一、押収にかかる金銭出納帳二冊(昭和四四年押第一〇四号の三、四)、四一年売掛帳二冊(同押号の八、九)、給料明細綴二綴(同押号の一九、二〇)、メモ類綴一綴(同押号の二〇の一)
判示第一の事実につき
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(昭和四三年一一月二二日付)
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和四三年一一月二九日付)
一、刈谷税務署長作成の証明書(昭和四三年一二月一九日付二通のうち最初の一通)
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(昭和四三年一一月二七日付二通のうち最初の一通)
一、石濱銀造作成の上申書
一、大岡豊の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、森さちよの大蔵事務官に対する質問てん末書(昭和四三年四月三〇日付)
一、押収にかかる仕訳日記簿二綴(昭和四四年押第一〇四号の一、二)、四〇年売上仕入月別金額の推移と題するもの一綴(同押号の五)、損益計算書一綴(同押号の六)、総勘定元帳一冊(同押号の七)、売掛金補助簿四冊(同押号の一〇ないし一三)、仕訳日記簿四綴(同押号の一四ないし一七)、総勘定元帳一冊(同押号の一八)
判示第二の事実につき
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(昭和四三年八月七日付)
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和四三年一一月二七日付)
一、刈谷税務署長作成の証明書(昭和四三年一二月一九日付二通のうち後の一通)
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(昭和四三年一一月二七日付二通のうち後の一通)
一、札幌国税局査察部長作成の嘱託調査回答書
一、宝月民雄作成の証明書
一、藤井義一作成の取引先照会回答書
一、藤村重次郎、長浦勇造、高田金典各作成の各上申書
一、石田伊佐巳、森田喜一の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、森さちよの大蔵事務官に対する質問てん末書(昭和四三年二月七日付)
一、押収にかかる四一年売掛金補助簿四冊(昭和四四年第一〇四号の二二ないし二五)、総勘定元帳三冊(同押号の二六、二八、三〇)、元帳の断片一綴(同押号の二七)、販購連補助簿一冊(同押号の二九)、仕訳日記簿一冊(同押号の三一)仕入帳一冊(同押号の三二)、仕訳日記簿六綴(同押号の三三ないし三六および同押号の三九、四〇)、商品書控二冊(同押号の三七、三八)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、情状により懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文一〇条により犯情の重いと認められる判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金の合算額以下において処断することとし、右刑期および金額の範囲内で被告人を懲役一〇月および罰金三〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、諸般の情状により同法二五条一項を適用してこの裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 白井守夫)